経済紙のマンション煽り

chiss4122006-07-21

東洋経済や週間ダイヤモンドがこぞって分譲マンションについて特集を組んでいるようだ。論点としては都心での地価の底打ちから上昇、その上昇を加速化させるREIT不動産私募ファンドと大手中小のデベロッパーを巻き込んでの土地取得&建設ラッシュ、そして金利の上昇。「今が買い」は本当なのか?

不動産デベロッパー(三井不動産、住友不、大京とか)は土地を買って物を建て、販売するのが本業なので、地価高騰を受けて値ごろ感がある物件の数が減少傾向にあっても土地は買い続けなければならない。これはまだ実需だといえるが、需要があるから作るという理論ではそもそも無く、本業のために作り、売るために需要を創造するという感じだろうか。皆こぞってイメージ戦略、付加価値戦略に走っている。だが、地価の過剰な高騰に庶民の所得がついていくはずも無いので、庶民が払える価格帯あたりのマンションの質は低下し続けざるを得ない現状がある。質を維持する方針では価格がコンフォートゾーンを越えてしまい、幅広い購買層にアピールすることが出来なくなる。売れない物件ほど厄介なものは無いので、この選択肢は無いだろう。となると「質」vs「価格」の限界ラインを越えたところで、ピークアウトが待っていると見る。

外部要因として「少子化」はどう作用するだろうか。
少子化は地方や郊外に顕著に現われ、その結果都心への集中を促がすと予想する。つまり少子化による需要減退というシナリオは都心部では適用されない。新興のベッドタウンは企業ではなく家族が中心なので、出生率が1.25では確実に町人口の老化と減少が進むだろう。減退期に入ったクローズドコミュニティ(町の中で全て完結してしまう環境)はインフラであるスーパーなどが採算の悪化を受け、撤退や縮小を余儀なくされ、その住環境の悪化がさらなる人口の減少の呼び水となる。そしてその向かう先は都心再開発地となる。プチ郊外や地方からの流入組みの受け皿は都心の未開発地域の再開発などの大規模プロジェクトだ。

最たる例は、豊洲、東雲、月島、芝浦、江南、武蔵小杉界隈。1000戸を越えるようなタワーマンションが商業施設なども巻き込んで人口を誘致しようとしている。都や区の財源は人口や企業にかかっているので、人口増は望ましい状況のはず。財源がリッチになれば住環境の改善なども見込まれることから、ここから数年は行政民間が一団となった都心回帰誘致合戦が一層すすみそうな気配だ。しかし上記の通り値ごろ感のある物件はこの夏以降は減少傾向にあり、土地取得競争が激化していることから質と価格を兼ね備えた物件は都心部から消えつつある。秋には現在の20%高い「新価格」が登場し、質と価格の乖離は広がる一方で、このままだと今後は質の低く狭い手ごろ価格のマンションか、めちゃ高の物件かの2極化がすすみ、どちらも購入層の多くにアピールできないものになる。

金利はどうだろう?

福井総裁手動の量的緩和の終了とゼロ金利政策解除による実質的な利上げが現在進行形で進んでいる。利上げといえばグリーンスパンバーナンキと17回も利上げをしたアメリカがまず浮かぶ。御存知の通り現在の米FFレートが5.25%、公定歩合が6.25%なので住宅ローン金利はさらに少し上方の水準。最近はスローダウンしたが、FFレートが4%台のころは住宅の値上がりが金利を食うくらい魅力的だったため、さほど金利がマイナスには働いていなかった。利上げの趣旨は景気引き締めなので、そういう住宅バブルのような現象を食い止めるために偉い人達が利上げを決定し、結果住宅は高騰に歯止めがかかった。

ではこの日本での土地上昇局面はアメリカと同様に考えると、利上げが地価上昇を食い止めることになる。具体的には、利上げが顕著に響くのは低金利での借り入れでレバレッジを効かせてきた不動産ファンドなど。金利負担増大はファンドのパフォーマンスを下げ、レバレッジが低下する。結果仮需が剥がれ、不動産の買い手が減少、売り手が増えてくる。そう考えると、金利上昇局面は必ずしも「買い」とは言い難い。また、住宅ローンの金利負担が増えることで需要が喚起されなくなってくるだろう。銘柄の選別を厳しくしなければ、ピークアウト時の資産価値の減少が激しくなる。

予想金利水準だが、個人的には欧州水準を下回って推移すると思う。現在欧州中銀が2.25%で、日銀が0.4%、ローン金利は変動が実質1.25%、10年固定が2.9%。日銀公定歩合が2.5%まで行くと、ローンは変動で3.2%、10年固定は先高感が薄いことこから3.7%ぐらいで、4%には到達しないと読む。35年固定の現在の水準が現在でのコンセンサスだと見てもいいだろう。

結論①「今は買い」だが、物件選別の目が重要②ピークアウトは「新価格」マンションが実際に売り出される頃かその少しあとと予想。③金利は欧州水準以下で推移。金利上昇局面の今年内引き渡しなら「買い」、来年以降なら不透明要素が多い④急いで決めると損しそうな流れ。⑤株もそうだが大衆紙に特集が組まれると相場は天井