【from日経 005】 サブプライム後

結局サブプライムには無理があった。最初の2年は低利でその後急遽高利に変わるローンが成り立つ前提は住宅価格があがり続ける必要があったからだ。すでに2005年春から兆候は出ていたのに、そしてローン会社破綻が数件続いて漸く、危機となった。まずサブプライムを組み込んだ「合成債務担保証券CDO」市場が崩壊。そのCDOなどの資産を担保として資金を調達する「資産担保コマーシャルペーパーABCP」を含むコマーシャルペーパー市場は買い手が付かず、結果金利も安定せず機能不全に陥った。投資家が極端に敬遠しているためだ。また金融機関も資金確保に奔走した結果金利が高騰。市場での資金確保も、CP発行による短期運転資金の調達の道も閉ざされた住宅ローン会社数社が破綻。さらに複雑なことにそうしたローン会社や投資会社がCPを発行できなくなった際に金融機関が資金を保証していた。金融機関は急な引き出しなどに備え、金融機関がCP市場に余剰資金を出さなくなる負のスパイラルが発生。これではFRBやECBが金融機関を介して市場に資金を供給しても、最終的に必要な人達の手には届き難くなってしまった。

世界の金融機関の四半期決算が10月19日に出揃い、各社の現段階の打撃状況が明らかになった。この巨額損失の影響は今後、信用収縮の長期化という形で表れる可能性がある。取引先企業や投資ファンドの資金調達手段だった証券化LBOは、企業活動やM&Aの資金源であり、世界株高のけん引役だっただけに深刻だ。

○シティ  純利益24億ドル(▲57%) 損失64億ドル *7-9月決算
○メリル  最終赤字        損失54億ドル 
○バンカメ 純利益37億ドル(▲32%) 損失27億ドル 
○JPMチェース  純利益33.73億ドル(2.3%)  損失22億ドル 
○GS    純利益29億ドル(79%)  損失15億ドル *6-8月決算
○MS    純利益15億ドル(▲17%) 損失15億ドル *6-8月決算
ワコビア 純利益16.9億ドル(▲10% 損失14億ドル 
○ベア   純利益2億ドル (▲61%) 損失9億ドル *6-8月決算
○リーマン 純利益9億ドル (▲3%) 損失7億ドル *6-8月決算
ウェルズファーゴ 純利益23億ドル(4%)損失3億ドル
HSBC   1-6月期に63億ドル強の貸し倒れ引当金計上
○UBS    7-9月期に9.4億ドルの赤字に転落、33.8億ドルの損失を公表
○ドイツ  7-9月期に22億ユーロ(31.4億ドル)の関連損失計上
○野村   7-9月期は500億円程度の最終赤字、1-9月期で総額1456億円(12.6億ドル)の損失計上
○みずほ  損失は6億円、○三井住友 損失は数十億円

その後2007年10月15日に、米大手銀3行、シティ、バンカメ、JPMチェースは信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)問題に対応するため、共同で基金を設立すると発表。米住宅ローンに投資し、資金難に陥っている運用会社向けに短期に資金を提供する。信用市場を正常化させ、金融・経済への影響拡大を防ぐ狙い。ファンドの名称は「M-LEC」。規模は750-1000億?で、90日以内に立ち上げる。M-LECが短期債を発行して資金を調達する。RMBSに投資している運用会社の、買い手不在を理由にした投売りを防ぎ、資金繰りを助け、破綻を防ぐ。この救済プランは米LTCM危機時の36億?を上回り、日本が90年代末に銀行に注入した資本の12兆円に並ぶ。